業務内容

 依頼を受けた弁護士は、少年事件が家庭裁判所に送致される前(捜査段階)には弁護人として、送致された後には付添人として、活動します。

 いずれの活動においても、少年の行った行為・現在の状況・心情及び将来を慎重かつ丁寧に見据えた上で、真に少年の為となるよう判断・行動します。

 例えば、少年が心を閉ざしていて、弁護士に対してでも容易には本心を語らないことがあります。また、友人を庇ったりして、本当の事を言わなかったり、言っていることが変遷したりもします。このような場合でも、結論を急いだり、最初からむやみに非難したりせず、少年の為に活動していることを示しながら信頼関係を築いていきます。

 そして、そもそも非行事実がなかったり、極めて軽微だったりするような場合には、審判不開始や不処分へ向けて様々な活動をします。逆に、非行事実の確認をした場合には、問題点や更生の方法などを少年と伴に考えて(少年自身に考えて貰うことが非常に重要です)、その為に必要な環境整備等をしていくのです。

 

捜査段階の活動

少年との面接等

 少年には嫌疑がかけられていますが、少年が実際に非行したか否かは決まっていません。

 そこで、まずは実際に少年が非行したか否かを少年との面接を通じて確認することになります。

 そして、非行をしたのであれば、その原因・背景に何があったのかを少年がきちんと理解して内省を深め、更生する為には何が必要かを考えて対処していく事が必要です。逆に、非行をしていないのであれば、反証材料を集め、捜査が不当であることを捜査機関・裁判官に主張する事が必要です。

 その為に、少年の心理状態に配慮しながら少年との面接を繰り返し、必要に応じて関係者との調整等を行っていくことになります。 

身体拘束について

 少年に対する身体拘束について、法律上は、「勾留に代わる観護措置」が原則とされていて(少年法43条1項3項)、本来の身体拘束場所は少年鑑別所であり、期間も10日に限定されています(少年法44条3項)。

 しかし、実際には、例外であるはずの勾留が原則的な運用になっており、場所も代用監獄(警察署)、というのが現状です。このような現状を踏まえて、ホームで「実務上、被疑者段階での扱いは成人でも少年でも同じ」と記したのです。

 弁護人としては、少年に対して不当な不利益が与えられないように、身体拘束からの早期解放を図るとともに、出来るだけ少年法の理念に即した運用が行われるよう求めていきます。 

 

学校や職場等への対応

 少年が身体拘束されている場合、学校や職場へどのように連絡をするかは難しいところです。

 例えば、少年が非行を認めている場合、少年の更生を図る為には、学校関係者の協力を得られる事が望ましいので、積極的に連絡をとることも考えられます。しかし、直ちに退学・解雇につながってしまう場合には、安易に連絡しないようにすることもあります。

 この辺りは、本人やご家族から学校や職場の事情を伺って、ケースに応じて、判断していくしかありません。

 もっとも、神奈川県や横浜市等では、警察と学校の間で相互に情報提供する協定が締結されているところもあり、警察から学校へ連絡される可能性があります。このことが少年の更生上むしろ弊害になる場合には、弁護人から捜査機関に対して、控えるよう申し入れすることも考えられます。

 

家庭裁判所送致後の活動

社会資源の整備

 家裁へ送致される事件の多くで、残念ながら、実際に少年が非行をしています。

 この場合、社会資源の整備が重要です。社会資源とは、少年が更生するために必要となる人的・物的資源の全てをいいます。

 非行少年に対する家庭裁判所の処分は、要保護性(少年を保護処分に付する必要性)によって変わり、要保護性は非行事実の内容や本人の反省具合や社会的資源等によって判断されます。

 例えば、非行事実が軽く、本人も反省していて、愛情と見識のある家族のもとで通学・勤労しつつ規則的な生活を送る環境が整っていれば、要保護性は低く、社会内で十分更生が出来ると家庭裁判所が判断する可能性が高くなります。

 この社会資源の整備をご家族と協力しながら行うのが、付添人の重量な役割の一つです。

交友関係

 不良グループや暴走族などに加わっている事が原因で非行に及んだ場合、これらの交友関係を断ち切れるかどうかが更生の鍵になります。少年自身が絶縁の決意をしていたとしても、仲間から働きかけられて再び交際してしまう可能性が高いような場合には、転校や転居も検討する必要が出てきます。 

通学・就労先

 通学先や就労先を確保して、関係者から更生への協力(Ex.審判への出席,上申書の提出)を得られることが一番望ましいことです。

 ただし、観護措置をとられただけで退学処分になってしまうこともありますので、新たな通学(転校)先を見付ける必要がある事もあります。

家族

 少年事件で、ご家族の有り様は重要です。お気を悪くされるかもしれませんが、悪者探しで言っているのではありません。少年にとって、その成長過程で最も親密に継続的に関わるのがご家族であり、その影響が良かれ悪かれ大きいのは間違いないという趣旨です。

 ご家族の関わりが欠乏していたり、又は不適切だったりすれば、少年に悪い影響を及ぼすことは容易に想像できます。その場合には、それらを適切なものにする努力・環境整備が必要になってきます。

 逆に、これまで特に問題がないと思われる場合にも、少年の非行事実と向き合い、何か改善するところがないかを真摯に考える必要があろうかと思います。

 ご家族が適切に関わっていくことによって、少年に良い影響が及ぶよう、付添人としても協力させて頂きたいと思います。

観護措置について

 少年事件が送致されると、家庭裁判所は24時間以内に観護措置を行うかどうかの判断をします(少年法17条2項)。

 観護措置とは、少年の心身の鑑別を行うための手続で、観護措置がとられる場合には、実務上は、ほとんどのケースで少年鑑別所に収容される収容監護になります(法律上は、在宅観護もあります)。期間は、多くのケースで4週間に及びます。

 観護措置が不当かどうかは一概にはいえません。少年の非行原因が不明確であったり、家庭環境や交友関係などから在宅以外の方が少年の内省・立ち直りに資するなど、観護措置がむしろ妥当なケースもあります。しかし、身体拘束されること自体による不利益は勿論の事、就学や勤務への不利益も大きく、重大な権利制限であることは間違いありません。

 そこで、観護措置が不当であると考えられる場合は、付添人として意見書を提出する等して、家庭裁判所へ観護措置決定をしないよう働きかけます。その際には、家庭がしっかりしており、また付添人もついていて鑑別への通所に問題はない為に、身体拘束の必要性がないことや、身体拘束による不利益があること(Ex.退学・解雇のおそれが強いこと)などを主張していきます。

 このような付添人の活動によって、観護措置が回避され、少年が自宅できちんとした生活を送れれば、少年院送致をする必要はないことを窺わせる重要な実績を家庭裁判所に示すことにも繋がります。

被害者との交渉

 少年事件に被害者がいる場合には、被害者と交渉し、被害弁償をするとともに、少年の非行を許して貰うよう活動します。

 ただ、付添人だけが奮闘しても、少年事件において有意義な活動とはいえません。大事なのは、少年自身に関わって貰うこと。具体的には、少年が被害の実態を正確に知り、被害者の心情にも理解を及ぼし、反省を深めるとともに、謝罪の手紙を書いたりしながら、二度と同じ過ちを繰り返さないようにすることです。また、親御さんにも積極的に関わって貰うことになります。少年自身には被害弁償の資力がない為ということもありますが、親御さんが投げやりにならずに少年の行為について責任ある行動をすることは、少年の更生の為に重要です。

審判に向けて

 上記したもの以外にも、捜査機関や家庭裁判所調査官が作成した記録を閲覧・謄写したり、裁判官や家庭裁判所調査官等と面談をしたり、意見書を提出したりと、付添人の活動は多岐にわたります。

 これらの活動は、審判で裁判官に適正な事実認定・処遇判断をしてもらうことを意図しており、勿論、付添人は審判期日にも出席して、少年本人や保護者へ質問したり、意見を述べたりして、最後まで少年に寄り添います。


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